四国自動車博物館

90C200

HONDA 90C200

ホンダ90C200は、1960年代半ばに非常に実用的で経済的な二輪車として登場しました。しばしば単に「ホンダ90」や「C200ツーリング90」と呼ばれたこのモデルは、ホンダの初期の「移動手段の普及」という哲学を体現し、その信頼性と使いやすさで瞬く間に評判を確立しました。適度な出力と軽量な車体が見事に調和し、当時の市場において「実に楽しい小さな機械」として評価されました。

この90C200が「ホンダ90」として広く認識されていたことは、1960年代におけるホンダの広範なブランド戦略を浮き彫りにします。この時代、ホンダは排気量をモデル識別の主要な手段として用いることで、マーケティングを簡素化し、幅広い層への浸透を図りました。しかし、この簡素化されたアプローチは、後に登場するよりスポーティーなS90モデルも「ホンダ90」の呼称を用いることになり、潜在的な混乱を生む可能性がありました。それでも、「ツーリング90」という名称は、その実用的なロード志向の立ち位置を明確にし、よりスポーツ志向やオフロード志向のバリエーションとは一線を画していました。このような命名戦略を理解することは、ホンダの初期のラインナップにおけるC200の具体的な位置付けを把握する上で不可欠です。

スポーツカブC110からの系譜

ホンダ90C200は、突然現れたわけではありません。それは、ホンダの成功した軽量バイクシリーズにおける論理的な進化の産物でした。スポーツカブC110の直接の後継機としてデビューし、その実用的なスポーティーさを継承しつつも、排気量を拡大したエンジンによってその性能を大幅に向上させました。この進化は、よりパワフルでありながら経済性を維持した車両に対する高まる消費者の需要に応えるため、ホンダが軽量バイクの提供を継続的に改善・拡大するというコミットメントを示していました。

デビューと生産期間(1963年~1967年)

ホンダC200は、1963年5月に日本国内市場向けに正式に発売されました。しかし、特に欧米市場への導入に焦点を当てた資料では、1963年9月の発売が示されています。このわずかな時期のずれは、地域ごとの段階的な導入や、初期の限定的な発売と広範な市場展開との違いを反映していると考えられます。C200の生産は1967年まで継続されました。特筆すべきは、1966年までにその販売が鈍化したと報告されていることです。これは、より象徴的で技術的に進んだS90モデルの登場が影響しています。S90はC200のOHV(オーバーヘッドバルブ)設計に対し、OHC(オーバーヘッドカムシャフト)エンジンを採用していました。

この発売時期のわずかな矛盾(1963年5月と9月)は、細心な歴史家が注目する点であり、国内市場と海外市場での展開時期の違いを示唆しています。さらに重要なのは、S90の登場とC200の販売減速が同時期に発生しているという事実です。これは明確な因果関係を示しており、ホンダの小型排気量ラインナップにおける戦略的転換と、市場の嗜好の変化を物語っています。S90はより新しい技術を採用しており、消費者がより先進的なエンジン設計を重視し始めていたことを示唆しています。これにより、C200は、その美点にもかかわらず、技術革新の波の中で相対的に時代遅れとなり、販売の勢いを失っていったと解釈できます。

ホンダの「カブ」および「ドリーム」シリーズにおける90C200の役割

C200自体は、ステップスルー式の「カブ」ではなく、より伝統的なモーターサイクルでしたが、スーパーカブシリーズを世界的現象にした経済性と実用性という核となる精神を共有していました。そのスタイリングは、「トースタータンク」やフルチェーンガードといった特徴を持ち、当時の大型モデルである「ベンリィ」や「ドリーム」に類似していました。この類似性から、一部の愛好家は親しみを込めて「90ドリーム」と呼ぶこともありました。これにより、C200は、実用的なスーパーカブと、より伝統的なモーターサイクルスタイルのベンリィやドリームラインとの橋渡し役として位置づけられました。50ccモデルよりも大きなパワーを求めるものの、同様の軽量パッケージを好む人々にとって、「論理的なステップアップ」を提供したのです。

ホンダ90C200主要諸元表

項目仕様
タイプグレード名90 C200
型式C200 (CA200, "Honda 90", "C200 Touring 90"としても知られる)
発売年月1963年5月 (一部市場では9月)
生産期間1963年-1967年
エンジン種類4ストローク単気筒OHV (プッシュロッド) 空冷
原動機型式C200E
排気量86.7 cc (86 cc)
内径×行程49 mm × 46 mm
圧縮比8:1
最高出力6.5 PS (6.5 bhp) @ 8000 rpm
最大トルク0.65 kgf·m @ 6000 rpm
点火装置マグネット式 (コイルイグニッション)
クラッチ形式湿式多板マニュアル
変速機形式リターン式4段変速 (フットシフト、ロッキングペダル)
動力伝達方式チェーン (密閉式)
タイヤ(前)2.50-17 (4PR バイアス)
タイヤ(後)2.50-17 (4PR バイアス)
ブレーキ(前)5インチ ドラム
ブレーキ(後)5インチ ドラム
全長1805 mm (71.1 in)
全幅625 mm (24.6 in)
全高955 mm (37.6 in)
ホイールベース1194 mm (47 in)
最低地上高178 mm (7 in)
シート高762 mm (30 in)
最小回転半径3.35 m (11 feet)
車両重量(乾燥)85 kg (187 lbs)
車両重量(湿潤/装備)52 kg (115 lbs) (約1ガロンのガソリン含む)
燃料タンク容量約7.2 リットル (1.9 ガロン)
ヘッドライト定格25W/25W

HONDA 90C200: The Practical and Economical "Honda 90"

Introduced in the mid-1960s, the Honda 90C200 (often called the "Honda 90" or "C200 Touring 90") was a highly practical and economical motorcycle. Embodying Honda's early philosophy of "popularizing mobility," it quickly built a reputation for its reliability and ease of use. Its balanced power and lightweight body were widely praised, earning it the moniker, "a truly fun little machine."
Honda's broad branding strategy in the 1960s often simplified model identification by engine displacement, a clear example being the 90C200. However, this approach later caused potential confusion when the sportier S90 model also adopted the "Honda 90" moniker. Still, the "Touring 90" designation clearly marked its road-oriented stance, distinguishing it from sportier or off-road variants.
This model wasn't an abrupt creation; it was a logical evolution from Honda's successful lightweight bike series. Debuting in May 1963 (September in some overseas markets) as the direct successor to the Sport Cub C110, the 90C200 significantly boosted performance with an enlarged engine while maintaining practical sportiness. Production continued until 1967, but sales began to slow by 1966, influenced by the introduction of the more technologically advanced S90, which featured an OHC engine compared to the C200's OHV design.
Although the C200 wasn't a step-through "Cub," it shared the core spirit of economy and practicality that made the Super Cub series a global phenomenon. Its styling, with features like the "toaster tank" and full chain guard, resembled larger "Benly" and "Dream" models, leading some enthusiasts to affectionately call it the "90 Dream." This positioned the C200 as a bridge between the utilitarian Super Cub and the more traditional motorcycle styles of the Benly and Dream lines, offering a "logical step up" for those who wanted more power than a 50cc model but still preferred a lightweight package.

HONDA 90C200:實用又經濟的「Honda 90」

Honda 90C200 於 1960 年代中期問世,是一款極其實用且經濟的摩托車。它常被稱為「Honda 90」或「C200 Touring 90」,體現了 Honda 早期「普及交通工具」的理念,並以其可靠性和易用性迅速贏得聲譽。其適中的動力與輕巧的車身完美結合,在當時的市場上被譽為「一台真正有趣的小機器」。
1960 年代,Honda 廣泛的品牌策略常以引擎排氣量作為車型識別的主要方式,90C200 便是其中之一。然而,這種簡化的做法後來導致了潛在的混淆,因為隨後推出的更具運動性的 S90 車型也採用了「Honda 90」這個名稱。儘管如此,「Touring 90」的稱謂清楚地表明了其公路導向的定位,使其與運動型或越野型版本有所區分。
這款車型並非憑空出現,它是 Honda 成功輕型摩托車系列發展的必然產物。它於 1963 年 5 月(部分海外市場為 9 月)首次亮相,作為 Sport Cub C110 的直接繼任者,透過擴大引擎排氣量顯著提升了性能,同時保持了實用和運動的特點。雖然生產持續到 1967 年,但由於更先進的 S90 車型(採用 OHC 引擎而非 C200 OHV 設計)的推出,其銷量在 1966 年開始放緩。
儘管 C200 本身並非像「Cub」那樣的跨騎式設計,但它與 Super Cub 系列共享了使其風靡全球的經濟性和實用性核心精神。其造型,例如「烤麵包機油箱」和全鏈條護蓋,與當時較大型的「Benly」和「Dream」車型相似,因此有些愛好者親切地稱其為「90 Dream」。這使得 C200 在實用的 Super Cub 與更傳統的 Benly 和 Dream 系列摩托車之間扮演了橋樑的角色,為那些追求比 50cc 車型更大動力但仍偏好輕巧車身的人們提供了「邏輯上的升級」。