TRITON CAFE RACER [750CC / 650CC]

英国の名門2社が生んだ傑作
1950年代英国のとあるチューニングショップで、モーターサイクルに熱中する若者をターゲットとして「トライトン [Triton]」が誕生した。 その名は「Triumph + Norton」で、トライアンフ [Triumph] 社製のエンジンと、ノートン [Norton] 社製のフレームを組み合わせていることに由来する。 トライアンフ・タイガー [Tiger] シリーズに代表される2気筒エンジンは圧倒的な性能を誇る一方、操作性やフレームの耐久性の面で課題を抱えていたとされ、 剛性と安定感に優れるノートン・フェザーベッドフレーム [Featherbed frame] <*1> がその欠点を補うことによって、文字通り"虎が翼を得た"のである。 さて、当館で展示されている2台のトライトンは「カフェレーサー [Cafe racer]」と呼ばれるモデルで、スピードと操作性を重視してチューニングされている。 カフェレーサーとは元々、エースカフェ [Ace Cafe] のようなトランスポートカフェ <*2> の周囲で行われていたレースの参加者を指す言葉だったが、 次第にレースで用いられるモーターサイクルの特徴やタイプを呼称するものへと変化していった。 *1 ...... ノートン・フェザーベッドフレーム [Norton Featherbed frame] マッカンドレス [McCandless] 兄弟によってプロトタイプが制作され、1950年1月に完成した革新的なフレーム。これを採用した1950年の「マンクス・ノートン [Norton Manx]」は伝説的なモデルとして知られる。 英国の名のあるレーサー、ハロルド・ダニエル [Harold Daniell] が本フレーム採用車両のテスト走行後、「(従来のフレームと比較して) 柔らかな羽毛のベッド [Featherbed] に乗っているようだ」とコメントからこの名称に。 ノートン・フェザーベッドフレームは従来のフレームと比較して剛性に優れ、それ故に使い勝手が良く、標準的なフレームとして広く使用されることとなった。 今回紹介するトライトン以外にも、ヴィンセント [Vincent] やアリエル [Ariel]、BSA、ロイヤルエンフィールド [Royal Enfield] 等の英国メーカーとのハイブリッド車両の他、 中にはハーレーダビッドソン [Harley Davidson] のエンジンを搭載した車両も存在したことから、多くのバイカー達から重宝されていたことが伺える。 *2 ...... トランスポートカフェ [Transport cafe] 英国の主要な幹線道路であるA1やA6の道端にあり、長距離トラックの運転手やバイカー達の拠り所。食事可能な休憩スペースを提供するだけでなく、労働組合員が話し合うための待ち合わせ場所としても機能していた。